長崎精霊流し

華やかでありながら、しめやかな雰囲気に包まれる一日
大切な人の旅立ちです
気温33℃ 長崎
賑やかな爆竹にたちこめる火薬の匂い、個性豊かな飾り付け・・・連日30℃超えの暑さが続く長崎で、今年も「精霊流し」がおこなわれます。
有名シンガーソングライターの曲でもおなじみの長崎の精霊流しですが、その歴史は古く江戸時代までさかのぼります。
地区の精霊船を除き、船を作るのはその年が初盆の家だけ。
8月15日の夕刻に親戚や友人、知り合いが集まり御霊をのせた精霊船をひいて故人を西方極楽浄土へお見送りするのです。
地区によっては故人に所縁のあった場所、親戚宅に立ち寄りながら旅立ちのご挨拶。
精霊船にベースとなる形はあるものの、故人が好きだったものをかたどったりすることも多く、故人と面識がなくてもすれ違う船の飾り付けを見ると「あ、このかたは海がお好きだったんだな」とか、「運転に関わるお仕事をされていたんだな」などと親近感を覚えたりもします。
精霊船はみんな「流し場」と言われる所定の場所に向かいます。
その道中には大量の花火と爆竹が使用されます。諸説あるものの、この花火には「故人の御霊がかえる時に寂しくないように」「暗い道を照らし道に迷わないように」という想いからと言われています。
とはいえ長崎に住む私たちですら、毎年その爆竹の使用量がすごいなぁと思うのですから、観光で来られたかたは尚更驚かれると思います。
そんな賑やかで華やかな道中が終わると、船から故人の遺影と位牌を降ろし船の担ぎ手は帰路につきます。
心なしか、親族の腕に抱かれたご遺影の故人の笑顔が満足気に見えるのは気のせいでしょうか。
時代と人は変わっても、故人と今を生きる人々がともに続けてきた精霊流し、そして伝統を守りつくり上げてきた長崎の町へ、どうぞみなさんお越しください。
執筆者:田添 浩之